私の仕事はこのファーム(農場)が全体としてうまく機能させることです。ですので、チームとして牛を育むということについて、潮風ファームでは、どんな工夫をしているのかをお伝え出来ればと思います。
私の仕事は、このファーム(農場)が全体としてうまく回すことです。例えば牛舎の中で、牛の移動効率を良くする、牛の状況に合わせて1つの枠の中に2頭入っている所を1頭にしてみる、といった工夫です。行っていることは単純ですが、毎月牛を出荷する必要がありますので、毎月頭を悩ませます。心を持った相手ですから、なるべく自分の場所からは移動させたくないですし、隣近所も変更しないほうがストレスは少ないでしょう。ですが隣の牛が出荷でいなくなれば、空いた場所に別の牛を入れてあげなければいけません。神経質な牛の隣には、大人しい牛が良いだろうという具合で考えることは多々あります。人間の都合に合わせて管理すると牛のほうに無理がきますので、言葉の分からない牛の気持ちを汲み取ってあげることが難しいです。
また牛に携わる人間の気持ちもピリピリしていてはいけません。牛に伝わってしまいますから。一緒に働く人が気持ち良く働けるような雰囲気作りを心掛けております。
牛と人の両面を見る仕事ですが、基本として大切にする順序は牛が1番で、人が2番でなければいけないと思っております。井上さんから教わった事ですが、つい自分たちが楽をするために、牛に人間の都合を押し付けてしまう・・それでは駄目なのです。私自身、昔は色々な事をやってみたいタイプの人間でしたが、ここ(潮風ファーム)に携わるようになり、私は変わりました。
牛は子牛を買って出荷するまで2年必要で、65歳まで自分が関われるとしても、現在45歳ですので、あと20年ほどしかありません。周期で言えば10回程度です。そんなにたくさんトライ&エラーが出来るものではないのです。島なので人が大勢いる訳でもありませんし、育てる時間や一緒に過ごす時間がないと意味もないので、そう考えるとたくさんは出来ないと思うようになりました。人の心や、牛の成長と同じ速度ででしか、歩めないのがこの仕事だと思います。
人間の都合より牛を優先するというのは、経営とのバランスを考えるとすごく難しいです。例えば、ここでは餌をやる時は、牛一頭一頭、100gまで餌の量を調整します。この牛には4100g、こちらの牛には4300gという具合です。それなので、餌やり一つにも時間がかかります。効率を考えれば「生後15ヶ月の牛はこの箱一杯」というやり方のほうが効率はいいでしょう。
ですが、2年間ずっと100g違うと、牛にとって負担になります。1週間で下手すれば2kgくらい体重が変わってしまう。一頭ずつ餌の量をちゃんと見てあげる事で餌が残っているかどうかにも目をやって、昨日より食欲が落ちていないかも見てあげられます。結局そうやって毎日牛を見るという時間を仕組みの中で作っているのです。名前も一頭一頭ちゃんとあります。性格も育て方も、前と全く同じ牛というのはありません。一期一会というか、一牛一会です。
島から本土へわざわざ持っていくのですから、良い牛を持っていかないといけません。それは他の所よりも時間も人もかけてやらないと出来ないことだと思っておりますので、それくらいの気持ちを持って牛を育てております。
(2009年3月現在)